2017年12月29日金曜日

スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』_波乱と感動の航海

いろいろ忙しくて、ゆっくりブログを書いている暇がない(ホントに無い!)日々ですが、今年のうちにこれだけは書き留めておきたいという思いで記す日記。その1。

というわけで、スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』のことを書いておこうと思うのです。


平成27年の『ワンピース』初演は新橋演舞場で拝見して、これはもう衝撃で、その時も歌舞伎史の事件だと思っておりました。そのあと、シネマ歌舞伎にもなり、それを見た虫六子も夢中になり、「再演したら絶対見たい!」とせがまれて、「よし!なんとしてもチケットゲットしような!!」と2倍増しで気合いを入れて、今年の10月からの再演を待ちかねておりました。
そして万難排して10月の公演を2枚ゲットし、11月に仕事がありそうだったので休日くっつけて尾上右近さん主演によるマチネ「麦わらの挑戦」も見る気満々ですべての予定を整えておりました。

巳之助さんの魅力を見いだした初演、そのあと、猿之助はダブルキャストで巡業に付き合わせて、実力をつけたように、今度の公演では右近さんに大きなチャンスの機会を与えていました。それが「麦わらの挑戦」。

右近さんといえば、虫六の印象では、かの六代目菊五郎のDNAをいただきながら(*1)、音羽屋劇団の中ではまだ若いせいもあったけど、ちょい役の役回りで、お正月の劇場中継でも楽屋で他の御曹司にいじられていて、親が役者じゃないとなかなか大変なのかなぁ…などと思っていたら、そのうち「研の会」という自主公演などにも挑戦しはじめ、これは見どころあるなと思っておりました。研究熱心なのもブログなどに溢れていましたしね。

(*1)六代目にはお嬢さんがおふたりいて、長女の久枝さんは十七代目中村勘三郎の妻となり、十八代目中村勘三郎の母となり、次女・多喜子さんは六代目清元延壽太夫の妻となり、当代の清元延寿太夫を生みました。その次男は二代目尾上右近さんにあたるわけです。個人的には、延寿太夫さんと七之助さんって似てるから六代目のルックスなのかな?とか思ってましたが。

猿之助(ヨダイメ)はさすがに慧眼あるなぁと、その抜擢にも舌を巻いていたのですが…、それが開演まもなくとんでもない大事故がおきて、猿之助がまさかの休演となり、奇しくも猿之助が準備していたマチネ公演の体制で2ヶ月という展開になってしまいました。傷みや不安や忸怩たる思いの中で、代役での航海をさせることを即決し、船を降りた猿之助。本当にすごい。

そんなわけで、まずは虫六子と見に行った10月の公演。すでに25日になっていたので、やっと来れた!って感じでした。



幕開きのナレーションで、もう涙腺崩壊。役者がひとりも出てないのに、なんで泣きたくなってしまうんだ…と思ったけど、すみません、役者1人でてました。ナレーションは勘九郎さんでした。
でもこのナレーションがかかっている時に幕に投影された言葉が、猿之助のメッセージそのものに響いてくる。「悔いのないように生きる」。それは歌舞伎の未来に対して、考えられることを全部ぶつけてみるぞって言っているようで、その姿として「ワンピース」という作品があるって言われているようで、結果的に怪我のリスクがあったかもしれなかったけど後悔なんかないって言われているようで、胸の底まで届きました。どこかにあの全文のせてくれないかな。

それにしても、猿之助の不在を任された若手(右近、巳之助、隼人、新吾)の熱演は凄まじいものでした。立ちまわりや本水のシーン、初演の時を上回る気迫。
ナミちゃんとサンダー・ソニアの役は春猿さんがやって適役だったけど、新派に移られたので、あの役どうなるんだ?と思っていました。でも、新吾さんのナミもサンダー・ソニアもビューティフルで最高でした。

浅野和之さんの達者な演技も健在でやっぱり好きだわ〜と思ったし、初めて見る平岳大エースも格好良かったね。私は福士エース贔屓でしたが、平エースも、はいステキです。

もちろん若手だけじゃないよ、この船に乗っていた役者全員が凄いエネルギーを放出していたし、たぶん、表に見えていない裏方の皆さんも一丸になっていたと思うし、なにより、会場の雰囲気が違ってた。やっぱり凄い芝居に遭遇してしまったんだなと、身震いがする体験でした。

商売に乗せられている感が否めないけど、やっぱりノリを満喫しなくっちゃと、ファーファータイム用にタンバリンをひとり1個づつ購入。右近ルフィー宙乗りで、「TETOTE」がはじまり、来ましたー!で、2階席も総立ち縦ノリ。出演者のみなさんが2階・3階にも姿を見せてタンバリン交換してました。すでにリピーターの人たちがメッセージ付きで準備していたりして、上級者がいるものです。(総数10回くらい見にいった方もいるらしいよ。そこまで惹きつけるとはやっぱり凄い芝居だよね。)

最後は、teamワンピースが全員で奈落に下がるエンディング、なんだか、じんとしました。



新星や彗星やキラキラしてるお芝居が満天で、胸がいっぱいになったけど、やっぱり四代目は太陽なんだなと。これが来年でも再来年でも私は待ちますけど、猿之助が真ん中にいるこの芝居が絶対に観たいと、心が何度も立ち上がって、また胸がいっぱいになりました。

猿之助さん、元通りの身体になって舞台に帰ってこられること、心よりお祈り申し上げます。

平成29年10月6日(金)~11月25日(土)
尾田栄一郎 原作 横内謙介 脚本・演出
市川猿之助 演出 市川猿翁 スーパーバイザー
スーパー歌舞伎II(セカンド)ワンピース

ルフィ/ハンコック        尾上 右近 ※ 
白ひげ              市川 右團次
ゾロ/ボン・クレー/スクアード  坂東 巳之助
サンジ/イナズマ/マルコ     中村 隼人 ※
ナミ/サンダーソニア/サディちゃん  坂東 新悟 ※
アバロ・ピサロ          市川 寿猿
チョッパー            市川 右近 *
はっちゃん/戦桃丸        市川 弘太郎
ベラドンナ            坂東 竹三郎
ニョン婆             市川 笑三郎
ジンベエ/黒ひげ         市川 猿弥 
ニコ・ロビン/マリーゴールド   市川 笑也 
マゼラン             市川 男女蔵
つる               市川 門之助

エース/シャンクス        平 岳大 
ブルック/赤犬サカズキ      嘉島 典俊 
イワンコフ/センゴク       浅野 和之 

※市川猿之助休演につき、代役にて上演。


終演後、この日2回目観劇のあややちゃんと合流して銀座シックスの大食堂で、3人でいろいろ反芻しながらご飯を食べて帰りました。芝居があがったあとの食事はいつもさまようことが多いけど、遅い時間でもやっててここは便利だわ。



実は、新橋演舞場に行く前にも銀座シックスの蔦谷書店で時間を潰したのですが、この店舗はアートに特化した品揃えで、虫六的にストライクでした。伝統芸能系の書籍もたくさんありました。高額なのできっと図書館も入れてくれないであろう篠山紀信先生が7月に出された写真集『KABUKI by KISHIN』が何げにおいてあり、全ページ拝見。さすがに見応えありました。最後のページは18代勘三郎さんの写真で、写真家の思いが伝わってきてグッと息が詰りましたよ。これを見ただけで銀座にきた甲斐があったなーと、実はお芝居見る前に満腹になり、劇場へ足を運んだのでした。

そして、11月。
本来、「麦わらの挑戦」であった回で、出張帰りにスーツのまま足を運んだのですが。
右近さんをはじめ、全体にとても余裕があって安心してみることができ、成長しているんだなぁと思いました。抜かりなくカバンの奥にタンバリンを隠し持っていたので、段取りどおり二幕目で取り出してファーファー縦ノリしたら、なんだかとても発散しました。

ちなみにこの日のナレーションは七之助さんの声でした。(たぶん)

後半なので筋書きに写真入りましたか?って聞いたら、「結局、今回は写真は入れないことになったんです」とのこと。それで、前回まだなかった四代目のルフィとハンコックの写真を購入。実はこの日、このあと歌舞伎座で仁左衛門さんの勘平もみたのですが、両方で生写真を買ってしまったのでお小遣い使いきってしまいました。

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