2017年9月20日水曜日

夏休みレポート②_三島まで虫六子とうなぎ旅

夏休み、終わってしまいましたが、レポート①があるのに②がないのはどおよ?で、遅ればせながら、後半。

虫六子の帰省にあわせて数日間滞在するにうちに、文楽とか歌舞伎とかの予定を織り交ぜながら、彼女(アルバイトやご学友との遊び計画で忙しい)と1日予定をあわせ、今回の上京の最大目的である、IZU PHOTO MUSEUMで開催中の展覧会「テリ・ワイフェンバック|The May Sun」を、三島まで見に行きました。

なにしろ青春18切符を使って遊ぼうというケチケチ旅ですので、早起きして、快速列車を乗り継いで行くのです。でも東京からは快速のグリーン席を利用したので、特急列車に乗るような快適性。虫六子も旅気分でウキウキ。はじめて行く「三島」…どんな町でしょう?

我ら親子をウキウキさせていたもの。それは、三島の名物が「鰻(うなぎ)」という情報。旅情報誌に載っていた名店では、早めにいかないと品切れゴメンということだったので、まずは鰻で腹ごしらえをして写真展を見に行こうということにして、三島に着くなり、三島〜修善寺を結ぶ伊豆箱根鉄道駿豆線に乗り、最寄りの三島広小路で下車。

雑誌がすすめていた「うなぎ桜家」さんに向かいました。安政3年の創業。富士山の雪どけ水がしみこんで三島の地下水となり、その湧き水で、仕入れた鰻を1週間しめるというこだわり。富士を喰らうぞ!うおー!

が、開店の30分以上も前に着いたのに、すでにお店の前には人だかりが…。( ̄◆ ̄;)
予約表が置いてあったので急いで記入。
虫六「おおぉー、17番か…まぁまぁだね…。」
虫六子「虫六、なにみてる、この用紙19枚目だよ!」
虫六「ええええええぇぇぇ Σ(゚□゚(゚□゚*) 」

驚いている間にも、人は続々やってきて、「11時に電話で予約した○○ですけど…」とか案内のおじさんに声を掛けていたりして。
虫六(うひゃー、電話予約もありだったのか…、ってことはこの予約表に記入されている他にも入店予定の人たちがいるってことなのか)…と、計測不能状態に。

虫六「あのー、すみません。いま、リストのこの辺なんですけど、どのくらい待てば入店できますか?」
案内のおじさん「うーん、中のことはこちらでは分からないんでね、とにかく順番がきたらお呼びしますから、店の近くにいてください」

はたと振り返ると、お店の脇んちょが公園みたいになっていて、そこにまた開店を待つ人の群れが…。(あんりゃぁ〜( ´;ω;`))

とりあえず、公園の周辺など散歩しながら待つことに。富士山の伏流水、きれいです。

駿豆線って「踊り子」が乗り入れているんですね。タイミング良く通過したので(!)1枚いただきました。

そんなこんなで開店時間になっても、待機している人が減った感じがあんまりしないまま、店前に戻ってみると、リストは20枚目が埋まるところで、後から来た人たちがそろそろお断りされております。
(ってことは、なんですかね?予約が入っていれば、食いっぱぐれることはなしと、そう思っていいのでしょうか?)
ふと、予約表の右上に目をやれば、「15時30分までに店にお戻りください」ってなことが書いてあるではありませんか…。昼の部はこの時間までということなんだなと、推測して、まずは写真展を見に行こうという作戦に切り替えました。

IZU PHOTO MUSEUMは、三島市内でなく長泉町にあるクレマチスの丘の中にあり、JR三島駅北口からシャトルバスが運んでくれます。向かう途中でザーザー雨が降って来てしまいました。こちらでアメリカの写真家テリ・ワイフェンバックの個展「The May Sun」が開催されておりました。

写真展をじっくりみて、三島に戻ると、もうすぐ2時。かなりお腹も空いてきました。きっと呼ばれるのは3時くらいだろうと予測をつけていたので、三島コロッケで小腹を作り、まだかなーって感じで「うなぎ桜家」さんに戻り、先ほどのおじさんに「呼ばれましたか?」って声をかけてみると、「あー○○さんね、ちょっと待ってね。…○○さんお戻りになりましたー」って店内のスタッフさんとウエアブルなトランシーバーでやり取り。「用意出来ているそうなので、いま呼びますから、そこで待っててください」と。
  おー、(。・w・。 ) (。・w・。 ) 

ほどなく店内に案内され、我らが注文したのは、各々「うなぎ重箱(2枚)3,750円」
であります。これかぁ〜〜、三島の鰻は。

ふんわり柔らか〜な、ぶ厚い身の蒲焼きに、ごはんが覆われております。
プリッとした歯ごたえとか無いの、本場の鰻ってこんなに柔らかいんですね。
タレもしょっぱすぎず甘すぎず、良い塩梅。山椒をふって食欲ましまし!
あやうく3枚のを奮発しそうになりましたが、我々の胃袋には2枚で十分でございました。
(コロッケ食べてなくても2枚で十分だったと思います…ぐるしっ)

今年はじめての鰻にありついて、ご満悦の虫六子。スタミナつきましたかー!?

お腹一杯で三島広小路をぶらついていると、町内会(?)の皆さんが櫓の組立中でした。ちょうどお盆の入り口で、夏祭りをやるんでしょうかね。

夕方まで少し時間があったので、せっかくだからもうちょっと足をのばしてみるかと、最近世界遺産になったという韮山反射炉まで行ってみることに。

正直に申しましょう、虫六、浅学につき「韮山反射炉」という文化史跡があったことも、これが世界遺産になっていたことも存じ上げず、今回、三島に来ることになって直前の予習に買った旅情報誌ではじめて知りました。( ̄◆ ̄;)
っていうか、行ってみたら想像より小さかった、です。

反射炉の脇にガイダンスセンターというのが出来ていて、そこで反射炉が作られた経緯とか、構造とか、世界遺産登録までのなんちゃらとか説明していました。

なんだか、つまりね、幕末に日本が開国しなければならないということになったときに、西洋列強諸国の軍事力に対抗できないから、ヨーロッパみたいな溶鉱炉で大砲とか砲丸とか作れるようにしとかないといかんということになったらしいです。その前の日本では、製鉄と言えば「たたら製鉄」が主流だった(もののけ姫に出て来たね)のが、明治に入って製鉄の技術はこのような西洋式に変わっていったそうです。

で、韮山反射炉が作られた理由は、どうやら100%「大砲を作るため」のようなのですが…
その目的が「平和のため」にという説明に置き換わっている不思議。

あのう、大砲って、戦争の道具ですよね?実際、このあとの日本って大陸に進軍したりして、戦争まっしぐらなんですよね?もう結果もでているのに…私の日本語の感性では、矛盾しているように思うんですが…。
でも、こういうレトリック、最近よく目にするように思うのは気のせいでしょうか???原発とか、憲法改正とか。

でも、茶畑からながめる伊豆長岡の景色は乙でした。天気がいまいちで、富士山が隠れていたのは残念でしたが、こちらの方角に富士山が見えるらしいです。

帰り道、虫六子が “電車みたいな” 電線を見つけました。

余談ですが、伊豆箱根鉄道は「ラブライブ!サンシャイン!!」ってアニメの聖地になっているらしいです(←虫六子に教えられた)。伊豆長岡駅はこんなことになっていて、マスコットをリュックにいっぱいぶら下げた男子が何人もうろうろしていました(笑)

【追伸】
なんかなー、やっぱりなーってことがあったんですね。この記事、後で知りました。

2017年9月12日火曜日

8月に読んだ本

8月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:762
ナイス数:23

新装版 手鎖心中 (文春文庫)新装版 手鎖心中 (文春文庫)感想
「バカだねー」と面白がって読み進めると、やがて哀れを通り過ごして怖くなる。『手鎖心中』は勘三郎さんが歌舞伎『浮かれ心中』に仕立てた作品で、…見ているはずなのにあまり覚えてませんでした。そんな分けではじめて読むような印象。『江戸の夕立ち』は江戸版ひょこりひょうたん島じゃないけど、どこまで行くんだよ〜おいおい的な面白さがあり。若旦那清之助の性、太鼓持ちの桃八の性、もうどっちもどっちで徹底的にしょうがない人たちだね、もう好きにおやり!って感じっなんだけど、でも憎めない愛嬌が作品の魅力でしょうか。
読了日:08月31日 著者:井上 ひさし

贋作・桜の森の満開の下贋作・桜の森の満開の下感想
野田歌舞伎「桜の森の満開の下」を拝見して、小劇場版「贋作・_」とどんな風に変えていたんだろうと興味を持って, Kindle版で読みました。Kindle版便利だなー。言葉遊びの充満した野田芝居、一回見たくらいでは煙に巻かれたみたいになってしまいます。しかも、歌舞伎演出のためにだいぶ改訂した…と伺っていたけれど、セリフにとても既視感があり、ほとんど変えていないんじゃないかと思うほどでした。いろいろお芝居の記憶が蘇ってきました。
読了日:08月20日 著者:野田 秀樹

桜の森の満開の下桜の森の満開の下感想
野田歌舞伎『桜の森の満開の下』をみて、まずは原作読んでみたいなと思い、青空文庫の内蔵版で読了。中世時代のあやかしが棲むような神秘性に加え、女の本性は鬼か…と底知れぬ怖さがありましたが、幼女の残忍性という面では他の作品にモデルがあったのかも。というわけで『夜長姫と耳男』も読まねば…と青空文庫の坂口安吾の書棚を検索したら、すごくぎっしり入っていて、読みたい作品いっぱいだ。
読了日:08月15日 著者:坂口安吾

おばちゃんたちのいるところ - Where the Wild Ladies Areおばちゃんたちのいるところ - Where the Wild Ladies Are感想
タイトルはM.センダックの「かいじゅうたちのいるところ」をひねったものみたい。どこか覚めていて、したたか(というか太々しくもある)女性たちの日常に、怪獣ならぬ物の怪や幽霊たちが明るく当たり前みたいに入り込む、ちょっと奇妙な短編集。幽霊が元気なおばちゃんだったり。それぞれのお話のモチーフが古典落語や歌舞伎だったりするところも、なかなか楽しめました。
読了日:08月14日 著者:松田 青子

読書メーター

2017年9月6日水曜日

夏休みレポート①_仙台から会津経由で浅草まで行ってみた。

いつもお世話になっているK老人が言うんですよ。
「虫六さん、会津から浅草まで直行便の電車が走っているの知ってるか?あれは一度乗ってみたほうがいい」と。
〵(=゚ω゚=;)/ なんですと!いきなり浅草に着くんですか?浅草に!

…なかなか東北にお住まいじゃない方はイメージしにくいかもしれませんが、新幹線を使わずに、仙台から“会津まわり”で東京に行くって、とお〜っても回り道、しかも決して安上がりでもないときて、二の足を踏んでいたんですが、夏休みに虫六子のところに行くついでに、思い立って実行してみることにしました。

虫六子の帰省に付き合うのに青春18きっぷ(5日間普通列車が乗り放題。特急には乗れないけれど、複数人で利用することも可能。もちろん大人でも使えます。)を持っていたので、行きの在来線はこれを利用することにして、時間節約のために、郡山までは新幹線を利用することにしました。仙台ー郡山新幹線Wきっぷを金券ショップのばら売りで購入。

郡山から先は、こんな行程でございます。

会津若松駅に着いたら、会津鉄道のリレー号が入って来ました。会津鉄道も初乗りなんですよね。…ん、ということは西若松から先は青春18きっぷは使えないのか…、出発前に車掌さんに声を掛けたら、浅草まで買った方がお得ですよと、車内補充券で発券してくれました。

よく知らないけど、もしかしてコレ、なかなかレアな車内補充券では?
検札の車掌さんに見せたら、「ほう」って顔をされたので、『銀河鉄道の夜』のジョバンニにでもなった気分でした。へへへ。まぁ、思い込みですけども。

お、映画『Railway』を地でいく見習い車掌さんだ。(さきほどの車掌さんとは別の方です。)

絶景かな、会津!
途中で降りてみたい駅が沢山ありました。

会津田島駅で乗り換え。待っていたのは『リバティ会津』。東武の新しい特急車両です。
実は、この列車、東武のホームページで指定の予約を入れたまではいいのですが、きっぷを受け取るのに、東武の旅行代理店か東武の駅でないと受け取れない上に、どちらか選ばなくてはならないのでした。で、S市で代理店があるのかどうかもわからないので、連絡時間が20分あるから、会津田島で受け取ればいいと思っていたのですが…。

駅について、調子よく写真なんか撮って、さあ予約した切符を受け取りに行こうとしたら、窓口は長蛇の列…うげげっ、しかも、地元のおじいちゃんとパソコン不慣れっぽい駅員さんがずーっと何やらやっていて、並んでいる人たちも相当イライラモード。
…そうこうしているうちに、『リバティ会津』の改札が始まってしまったよぉおおおお!!!!
で、そのおじいちゃんの対応が終わったら、「さぎに特急の人の分やっから、以外の人はあど」って。ひぃ。…そしたら3人くらいになって、汗汗。はやくぅ〜。

やっと順番がきまして、予約のプリントを出して指定特急券を買おうとしたら、「あれ?」って怪訝な感じになり、奥にいってパソコンに慣れた駅員さんを呼びにいっちゃった。
で、「あー出発15分前で、予約が取り消されちゃったねー」って。
まじかー ○|_| ̄ =3 ズコー これはオイラのせいなのか???

納得できないまま茫然としていると、「席に余裕があるから、指定取り直してやるから、浅草駅にいったら窓口で断ってください」と。
お盆繁忙期でしたが、逆コースだったのが幸いしてなんとかなりましたが。大丈夫なのか?これでいいのか?

こちらから『リバティ会津』を利用される際は、ネットではなく、旅行代理店で予約することをお薦めします。とりあえず。

なにわともあれ、ローカル線の旅番組にでるような駅弁(緑屋・松茸二段弁当)を食べながら三時間半の特急電車の旅。

鬼怒川温泉とか東武ワールドスクエアとか経由しながら、会津の景色を楽しむつもりが、前の座席を、通路を挟んで小さい子ども2人連れの母親と「おじちゃん」と呼ばれる男性1人のグループが(空いているのをいいことに)占領。なにやら複雑な人間関係なのかしら?「おじちゃん嫌い」とか「おじちゃんなんでそっちに座んの?」とかおこちゃまの声が響き渡っております。そして、そんな子どもを向こうの座席において、前の席で「おじちゃん」とイチャつく母親…とか。

なんで、この席…開放的な旅気分はたいぶ侵害され、東武のインターネット予約システムを恨む虫六でありました。

そうこうしているうちに、電車は住宅街に。都心に近づいて来たわいな。

なぜここに「クレヨンしんちゃん」のラッピング電車がいるの?と思ったら、ここは春日部駅でした。(*^-^)

あ、東京スカイツリーが見いる!浅草が近づいているよぉお。

でかっ!東京スカイツリーでかっ!先端が雲に隠れております。

いやはや、本当に浅草に着いちゃいましたよ。
嘘じゃなかった。

東武の駅、こんな風景だったのは知ってましたが、いま自分が会津からやってきて着いた駅かと思うと、感慨深いものがあります。

浅草寺に「おかげさまで着きました」とご報告。(* ̄ー ̄*)
お盆でも観光客で賑わう浅草よ。

で、この日の本来の目的地は、実は三軒茶屋の世田谷パブリックシアター。
ぎりぎりでしたー!
「杉本文楽・女殺油地獄」ね。この話はまた。

後日談)
仙台に帰ってから、会津ー浅草の旅についてK老人に報告したところ、
K「なに、虫六さん本当に行ったのか!?偉いなぁー、すごいなぁー」
虫「すごいなぁーって、Kさんもやったんでしょ?」
K「いや、俺は鬼怒川温泉までしか行ったことないの」
虫(人に勧めといて、まだ未踏だったんかーい!(*`ε´*)ノ)


2017年8月31日木曜日

野田歌舞伎の復活『野田版 桜の森の満開の下』

朗報です。野田歌舞伎が復活しました。

8月納涼歌舞伎といえば、恒例の三部制。勘三郎さんや三津五郎さんが工夫を凝らして作ってきたんですよね。その歌舞伎座で、そのご子息たちががんばっておりますので、お盆だったけど、役者の魂もお家に帰る前に小屋にお立ち寄りになっていらっしゃることでしょう。きっと。

 っていうか、お孫ちゃん世代もがんばっております。

ん?…っん!!!!これは千之助君、ちょっと見ぬ間にイケメンに…。
この方が、「吉田屋」の伊左衛門とか、「女殺油地獄」の与兵衛とか、脂ののったお芝居を見せてくださるころまで、我が黒翅は元気で保っておきたいものですな…。(しばし妄想)長生きしたいよ〜。

いやいや、うっかり横道にそれてしまいました。話は舞台に戻しましょう。

十八代目中村勘三郎が作り出した新しい歌舞伎の中でも野田歌舞伎『研辰の討たれ』は、平成時代の歌舞伎の金字塔だと、虫六、個人的には思っております。なので、勘三郎さんが亡くなって、野田歌舞伎も無くなってしまうのかなと、喪失感をいだいておりましたが、『贋作 桜の森の満開の下』を歌舞伎に…という勘三郎さんとの生前の約束を果たす形で、今回の野田歌舞伎復活となったそうです。

坂口安吾作品集より
野田秀樹 作・演出
『野田版 桜の森の満開の下(さくらのもりのまんかいのした)

耳男     勘九郎
オオアマ   染五郎
夜長姫    七之助
早寝姫    梅枝
ハンニャ   巳之助
ビッコの女  児太郎
アナマロ   新悟
山賊     虎之介
山賊     弘太郎
エナコ    芝のぶ
マネマロ   梅花
青名人    吉之丞
マナコ    猿弥
赤名人    片岡亀蔵
エンマ    彌十郎
ヒダの王   扇雀

予定が立たずチケット撮り損ねておりまして、幕見しかないと諦めていたんですが、N姐さんとご一緒することになり、なんだかんだでS席でみることができました。(うれし)
予習が出来なかったので、開演前に筋書きを読んだけれど、カタカナが多くて、さっぱり頭に入ってきません…。うんにゃあ、成り行きでみるしかないか。

そんなわけで、あらすじはこちら参照
小劇場版の『贋作(にせさく)桜の森の満開の下』は、Kindle版でも脚本が読めます。

『研辰_』は歌舞伎脚本を野田さんが改訂して演出したものでしたが、『桜の森のー』はもともと夢の遊民社(小劇場運動の第三世代における代表的な劇団)のお芝居として書かれた脚本なので、それを歌舞伎に仕立てるのは難しそうです。
畳みかけるような言葉遊びのセリフ回し、ゴムボールがはじけるようなスピード感、時空を綯い交ぜに行き交うカオス感が、遊民社の芝居の持ち味。歌舞伎に慣れた頭で見るとついていけないになって、野田さんのお芝居を見慣れた頭だとスピード感が物足りないと感想が別れそうです。
でも、虫六の率直な感想は、「さすが!」と思いました。さすがです、野田さん。

いくつか佳いなと思ったところ。

①音楽の使い方。
劇中に印象的に登場するテーマ曲には、2つの西洋音楽が使われていて、他はすべて下座音楽でした。
1つはオペラ『ジャンニ・スキッキ』のなかのアリア『私のお父さん』で、もう1曲はウェールズ地方の子守歌『SUO GAN』という曲だそうです。

耳男が満開の桜の花の下で背中の鬼と対話する、冒頭の場面で、『私のお父さん』が流れると、この作品全体が勘三郎さんに献げられているのか??と思いたくなりますが(いえ、関係されたみなさんの実際の思いとしてはあったと思いますが)、この曲は初演の時から使われていたようです(*1)。その偶然に感嘆します。のっけで桜の森に誘い込まれてしまいました。会場のどこかに勘三郎さんがいるような。

*1)ニコニコ動画に夢の遊民社が上演した『贋作 桜の森の満開の下』がアップされているとフォロワーさんから情報を得まして、拝見しましたが、間違いなくこの曲が使われていました。
また、こちらのブログでは初演時の音楽について詳しく書かれていらっしゃいます→「ごめんね、日常」[noda]僕の好きな音楽~「贋作・桜の森の満開の下」編

『SUO GAN』は、夜長姫が桜の花びらの中に消えて衣1枚が残るエンディングの場面で、それまで流れていた『私のお父さん』からスイッチで流れますが、この透き通るような合唱に深い余韻が刻まれます。この曲は、第1幕の、古代のクニづくり遊園地のカニのメリーゴーランドのところでも明るい編曲で流れてました…(って、見てない人はなんのことやらですね)

象徴的な音楽が西洋音楽だったのと、『研辰_』の時に竹本を面白くつかったみたいな地方さんによる派手なパフォーマンスはなかったけれど、他の劇判はすべて下座がやっていましたし、それも歌舞伎らしい合方が入っていて、良い感じでした。
嘘の三名人が弥勒菩薩を彫るノミの音が調子をもって、いつのまにかお囃子みたいになるところとか、染五郎が得意の鼓を打ったりして可笑しかった。
サントラを出してほしいくらいです。

②七之助の好演。
もとより七之助贔屓の虫六ではありますが、この役は“はまり役”だと思います。
鬼女の本性を肚にもち、童女のような無垢な凶暴さを、輝く姫の姿で振る舞う夜長姫。純情可憐・清廉潔白な早寝姫とは一対で(イタロ・カルヴィーノの『まっぷたつの子爵』みたい)、夜行性で、太陽が照る青空の下には人が右往左往する様子ばかりを見つけてしまい、それをみて大喜びしているという、恐可愛い複雑な人格を、歌舞伎の型を使って演じるのだけど、これが自意識が出過ぎないし、とても綺麗に決まっていました。
「女形でなければ表現出来ない役」とすら思えてしまったのでした。

七之助が、これまで、演じてきたいろいろなお役が結実しているんだと感じました。
『妹背山婦女庭訓』のお三輪など歌舞伎の役柄はもちろん、いのうえひでのりが演出した歌舞伎NEXT『阿弖流為』(2015年)での立烏帽子と鈴鹿の演じ分けや、シアターコクーンでの「ETERNAL CHIKAMATSU ―近松門左衛門『心中天網島』より―」(2016年)の小春役(おー、このとき共演したのは野田MAP版『贋作 桜の森_』の夜長姫を演じた深津絵里だったりして)の舞台もフラッシュバックしました。
他にも思い出されるお芝居いろいろありましたが、それらとも違う芝居。

七之助がついに化けた、と感じました。

会場のどこかにいた(と思う)勘三郎さんも、おもわず唸ったのではないかな。
そして、それを引き出したのは野田秀樹さんでしたね。

③最後の場面の完成度
野田さんも、歌舞伎版に改訂するにあたって、歌舞伎要素をいろいろ入れていました。いつの間にか「鬼」のレッテルを貼られ、追いつめられた耳男が夜長姫の手を引いて逃げる場面では、花道に入ったら、今度は姫が先に立ち耳男の手を引っ張って引っ込んだりして「曽根崎心中」の有名な場面がオーバーラップしました。そのあとの大団円は、桜が満開で、ピンクの布が道のように交差しつつ張りめぐらされて、実に見事でした。その中で、耳男が、鬼女となった夜長姫を殺しますが、これは「殺し」というより「情死」の場面でのようでした。いえ、耳男は死にませんでしたが。

家に帰って、『贋作 桜の森の満開の下』の脚本を読んで見たのですが、これが驚くほどセリフに既視感がある。実はほとんど変えていないのでは?と思うほど。演出って凄いんだなぁ。

さて、この見事な舞台装置は、堀尾幸夫さんが手がけていて、堀尾さんはこれまでの野田歌舞伎やNODA・MAP、三谷歌舞伎、スーパー歌舞伎『ワンピース』も手がけている舞台美術家です。たしか、中島みゆきの「夜会」の舞台美術も堀尾さん。
今回の桜の花は、「歌舞伎のいつもの桜あり、新しいお芝居のための特別な桜もあり。舞台が桜に満ちていて、なかなかの風景でした。」(歌舞伎座舞台装置株式会社ホームページ)という現場の声もあり、なるほど、歌舞伎座にあった歌舞伎らしい桜とこの芝居のために作られた桜が融合していたんだと知りました。
歌舞伎そのものへのリスペクトも感じさせる美術でした。

実は、余りにも余韻を引きづり過ぎて、他の部を見る気になれず(虫六としたことが珍しい)、2日後に予定していた幕見並びを取りやめて、新宿に講談を聴きにいったのですが、

その帰りにふらふらと東銀座にきてしまいまして、そしたらちょうど幕見の席を片付けるところで、札止めが掛かるところだったのを滑り込んで、また見てしまいました…(゚m゚*)
110番なので、当然立ち見です。4階の立ち見。

2回みたけど、2回目も面白かった。今度は筋が入っていたので、見切りがあっても着いていけましたしね。

初見では、勘九郎の耳男に勘三郎の姿が重ならず、ああ、いよいよ勘九郎も当代の芝居をするようになったなぁと感慨が深かったのですが、2回目遠くからみていたら、ときどき野田さん風の芝居が入ってました(笑)。わざとか?

個人的には、勘九郎のニンではマナコの役の方が似合うような気がしました。座長なのでなかなかそういう分けにはいかないと思いますが、再演する時は、特別マチネで「勘九郎=マナコ」でキャスティングいかがでしょう。
壁・ドン・オオアマは染高麗で決まり。エナコ芝のぶさんも好演でした!

…で、耳男は誰に?…巳之助クンなんかどおですか?
(ハンニャ役、小粒な役ながらすごく存在感ありましたよ!)

別の日にシネマ歌舞伎の撮影隊が入っていたという情報もありましたので、上映されるようになったら、また見に行きたいと思います。

2017年8月11日金曜日

7月に読んだ本

7月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:869
ナイス数:3

役者七十年 (1976年)役者七十年 (1976年)感想
昭和50年に朝日新聞に連載された十三代目片岡仁左衛門の随筆集。東京と上方で活躍した十一代目を敬愛し、尊敬しながらしんなり成長していく御曹司の少年時代、「片岡俳優養成所」のこと、青年歌舞伎時代、関西歌舞伎不況時代の危機感から一家をあげて挑んだ「仁左衛門歌舞伎」と、ご本人の随想なのでいろいろ興味深く読めました。巻末の年表もうれしい。それにしても十三代目って嫌みのない良い人だなぁ。若い頃の美少年ぷりも麗しい。
読了日:07月28日 著者:片岡 仁左衛門

茶色の朝茶色の朝感想
普通に友人との会話を楽しみ、朝のコーヒーを味わっているような日常に、じんわりと染みてくる「茶色」。深く考えずに目先の「安心」や「安全」のために「茶色化」を受け入れている内に、自由を奪われ取り返しの付かない事態に追い込まれていく。やんわりした寓話なのに底知れない怖さがありました。西ヨーロッパに極右運動が広がっていくのをみて、あるフランス人が「茶シャツのヨーロッパ」と名付けたそう。フランス人は敏感だな。いま、私たち日本の暮らしも茶色に染まりはじめていることを自覚しなければならないと、ぞっとしました。
読了日:07月20日 著者:フランク パヴロフ,ヴィンセント ギャロ,藤本 一勇,高橋 哲哉

日本会議の研究 (扶桑社新書)日本会議の研究 (扶桑社新書)感想
何やらいつの間にか右傾化していく日本。やばすぎる現政権のバックボーンを知っておかねば…の気持ちで読みました。
読了日:07月15日 著者:菅野 完

帰る場所 (ビームコミックス)帰る場所 (ビームコミックス)感想
まだ駆け出し時代の近藤先生の短編集。まだ中世説話の世界観ではありません。いまならもっと筆を省略しているなとか、初々しさを感じる部分もありますが、コントロール出来ない心の陰を描き出す鋭さや、得も言われぬ神秘性など、紛れもない近藤先生の作品だと思いました。
読了日:07月09日 著者:近藤 ようこ


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