2009年10月21日水曜日

中村屋若太夫「錦秋特別公演《芯》」

朝いつもより30分早く出勤してイレギュラーな仕事を片付けて、午後休(取り損ねた夏休みの代休)とって、盛岡行きの新幹線に飛び乗りました。
目的地は、岩手県民会館。盛岡、久しぶりです。
会館の前にどどーんとそびえる岩手県民のスローガン。直球です。

脇の方にもありました。ロマン…さすが宮澤賢治の里ですね。

で、お目当ては↑これでした。
中村勘太郎・七之助錦秋特別公演《芯》
http://www.zen-a.co.jp/kinshu/

毎年秋に企画される中村屋若太夫錦秋公演。今年はS市素通り(あんまりだ…)なので、いちばん交通費の掛からない盛岡でみようと電話予約開始の日にチケットを確保したんですが、こんなク○忙しい時期にかぶるとは…。無理矢理な午後休はきっと一部訝しがられていることでしょう。

今年の錦秋公演は趣向をかえて、太鼓の林英哲さんと津軽三味線の高橋竹童さんとのコラボレーション公演。

前評判が高かったらしく、会場1時間前に着いたのにすでにお客さんがベンチや待合所に座っていました。まさか、これ全部《芯》がお目当てのお客さんってことないよね?と思ったのですが、そうでした。しかも、さあ開場時間だと思ってその方向にいくと、ものすごい数の人が初詣のように並んでいて「最後尾はこちら!」状態。指定席なのに、なんで?なんで?と、“開演して暗くなったあとでもお客が入ってくるのが当たり前”感覚のS市民はカルチャーショックでした。

それだけじゃなく、開演後も盛岡のお客さんってなんとなく暖かい。すごく待ち望まれている感覚を演じ手の方々も感じられたんではないでしょうか?

で、公演ですが。
のっけから英哲さんがかっこよく決めて、大太鼓の響きが会場を一つの楽器のように振動させて盛り上げ、会場の余熱上がる上がる。若手の「英哲風雲の会」も奮闘してました。見せる太鼓の創始者とも言うべき英哲さん、ドラマチックな演奏もさることながら、舞台効果や演出にもかなり気を使っていました。背中は顔ほどものを言い…とは言わないけれど、大きな太鼓の円い面が日光のような光彩を放って、その前に位置する英哲さんの細マッチョな背中は、美しかったと言うべきでしょうね。若手の誰よりも均整が取れていて、感服しました。魅せますねぇ。

英哲さんのステージパフォーマンスに比べたら、竹童さんの津軽三味線の舞台効果はフラットでしたけれども、盛岡は三味線好きの人が多いのか、随所随所でわぁっと拍手がおきて、いい感じで盛り上がりました。民謡をアレンジした曲だったのも良かったし、胡弓で奏でる「風の盆唄」は大陸的な雰囲気もあって新鮮でした。即興で見せた超絶早弾きや棹弾きも凄かった!けど、…撥のおしりでも弾いてましたよ…、どおよ?それは。

で、いよいよ勘太郎丈と七之助丈。
前の演奏でテンション上がりまくっておりますので、どうなることかと少々心配でしたが、「二人椀久」は難曲ですものね、そちらの緊張感の方が凄いというか、気合い入っているのが伝わってきました。上方の踊りらしく、七之助丈は遊女ながらもはんなりとした気品とはかなさがあって、古い時代のお雛さまのようでした。本当に拝見するたびに成長著しく嬉しいばかりです。襲名間近な勘太郎丈もその狂人ぶりがキていて惹きつけられました。

踊るお二方も気合いが入っていましたが、この演目をリードしていたのは長唄連中・立唄方の杵屋巳津也師匠だったと思います。とても艶とのびのある美しい声がビーンと会場に響いてきて心地よいこと、踊り手もきっとそうだったことでしょう。「二人椀久」っていい曲だなぁ (* ̄ー ̄*) 
太鼓や津軽三味線のような派手さは無いし、この場合主役は踊りですが、長唄だって負けていないぞという存在感を十二分にアピールできていたと感じました。声も楽器なんですよね。巳津也師匠、大注目です。

最後は出演者総出演(長唄以外)での、コラボレーション《芯》。
これは、演出・振付が藤間勘十郎師匠、音楽監修が田中傳左衛門師匠と林英哲さんだそうです。(傳左衛門師匠、歌舞伎座に出ていたのにどうやって?と思いましたが、監修でしたのね)難しい仕事だったと思いますが、巧く出来ていたと思います。ステージとしてとても面白かった。どうやら英哲さんの胸を借りた感じですが、若太夫2人の身体能力の高さが見事なので、あまりちぐはぐなものになっていなくて良かった。もっとたっぷりあっても良かったな。お二人にとっては記念碑的な作品になるのではないでしょうか?ちなみに、お姫様じゃない素踊りの七之助丈もかなり「萌え」でした( ^ω^ )

こればかりでも困るのですが、これも確実に歌舞伎役者の成長に糧になるんでしょうね。

それにしてもこの公演、昼夜二回です。驚異的な体力ですね、彼らは。このあと23日は徳島、24日は大阪だそうです。無事に千秋楽を迎えられますようお祈りする次第です。踊り上手な兄弟なので、錦秋公演はいつも楽しみ。来年は是非S市にも寄っていただきたく…。

昼の部終わって会場の外に出たら、雨でした。タクシーに並ぶ人の列も初詣のようでした。

0 件のコメント:

コメントを投稿