2014年5月23日金曜日

超絶技巧!明治工芸の粋

つい昨日の会話。
Ms.K教授「虫六さん、ポール見に行ったんだって?中止だってニュースみたけど…(中略)…、で何か他にみてきたの?」
虫六「とりあえず、当日は意気消沈で…。中止決定が3時くらいだったら、明治座に空席無いかな?とか、のぞむことはあったんですが、なにしろ5時近くの発表でしたので代わりのプランというのも立てられず…」
Ms.K教授「……。そんなぎりぎりまで中止決まらなかったの?!それじゃどうしようもないね。電車代や宿泊代は戻って来ないんでしょ?」
虫六「JRやホテルは、ポールと関係ないですからね…丸損ですね。でも、翌日に、三井記念美術館で『超絶技巧!明治工芸の粋』って展覧会を見て来ましたよ。」
Ms.K教授「(笑)ああ、やっぱり」
虫六「なんですか?(汗)その、やっぱりって!!」
Ms.K教授「(笑)いや、ただ帰っては来ないだろうな〜と思って…」


はいはい。
転んでもただでは起きない虫六、手ぶらでは帰ってきませんよ、とりあえず…。
正直申しまして、ライブの翌日については虫六子を“6時半にはやぶさにのせる”ってこと以外には、さしたるミッションは無かったのであります。が、そうね、勿体ないねということになり、急遽、何か面白いことやってないかなーとネット検索したところ、引っかかったキーワード「超絶技巧!」。
なぬー、虫六、この言葉に弱いのであります c(>ω<)ゞ

そんなわけで、見て来ました。
  会場:三井記念美術館
  期間:4月19日〜7月13日

展示の中身は美術館のホームページが詳しいので、チェックしてみてね。
朝イチで入ったのに、妙に混んでいてビックリしましたが、NHKの日曜美術館で取り上げていたらしいのね。どーりで。

で、たっぷり拝見しまして、…クラクラきました (@Д@;
とにかく芸が細かい。まさにクールジャパン!…つか、何考えてるんだ、明治の人よ?
乱視がすすみ、老眼にさしかかっている虫六にはつらい細かさであります。モノスコープとか持っていった方がよいよー。

驚きというより、あんぐりの作品目白押しですが、例えば、象牙細工。
いきなり野菜です。例えば筍は皮のすじすじに先っぽのケバケバ、ピンク色の根っこ、それが皮を割って伸びてくるところまで質感が彫り分けられ、色味に至るまで超リアル。どうやって彩色しているのかな…。他にもミカンとか柿とか、トウモロコシとか…。
それにしても何故?象牙で…。
  (その筍で、撥・駒いくつ取れますか…)
作ったのは安藤禄山という方で、この人は弟子も取らず、記録もなく、ただ作品のみを残して消えていった謎の多い作家らしい。いまや、だれも再現できないらしい幻の技芸(だいたい材料が象牙だし)。
そういえば、外国の美術館には象牙の根付コレクションとかあるらしいぞ。根付って海外旅行のお土産にちょうど良い大きさと高級感ですが、牙彫の技術はこちらの方に突出したのか…。
牙彫の作品は石川光明のもありましたが、こちらは彫刻っぽい。高村光雲のもありました。何か、日本の芸術の分かれ道を見た気がしました。

それから、日本刺繍。孔雀の屏風が凄い迫力、しかも、美しい。糸を刺しているので、絵と違って立体感があって凄い。いったい何層に糸が重なっておりますか。こういう技術も、大奥のお局さまの裲襠とかに使われていたのかな?

そして、甲冑なんかを作っていた技術は、「自在」という金工細工の道を拓いたそうで、関節がぜんぶ動く伊勢海老や蟹の節足動物、くねくね曲がったり巻きついたりする蛇、圧巻は蜂ですかね。針がびゅっ!ケースの中においてあると精巧な金工かなくらいで、分かりませんが、動かしているビデオを見て真価を知りました。すげー、触ってみたい。

さらに、刀装具などを作っていた工人たちが活路を求めたのは、やはり「金工・鋳物」。
正阿弥勝義の、蛙が蓮の葉に跳び移る瞬間を捉えた皿や、古瓦に留まって蜘蛛をねらう鳩の香炉などは、俳句のごとき新鮮な詩情とリアリズムに溢れていて現代的ですらありました。個人的に好み…。そのうち研究者があらわれて、若冲のように評価されていくのではないかと想像した次第。

そして、どうやって作っているのか全然想像できなかったのが、「有線七宝焼」のお茶碗の内側にびっしり描かれた幅1ミリくらいの蝶々の群舞。超絶蝶々(@Д@;
外国人が値をつけたらしいッスよ。日本人の目にはほとんど触れないところで、日本のこんな技芸が作品が海外で評価されていたんだそうです。
七宝焼きなんて、このあたりではおばちゃんのブローチか帯留めくらいしか存在を確かめられませんが、大壺や鉢・花瓶・香炉など形の複雑なものや大きいものも随分作られているようです。それにしても、ほんとどうやって作るんだ?知りたい、マジで。
七宝焼きは、明治期にグラデーションも表現できる無線七宝という技法も編み出されたそうです。

そして、「薩摩」とよばれる、薩摩焼。これまた細かいの。これもだいぶ欧米ウケして流行ったみたいです。薩摩藩は勝機を読むのに長けているんでしょうね。


江戸以来の高級工芸(庶民の生活の中にあった民芸ではなく)は、ご一新でそれまで後ろ盾だった武家社会が崩壊して、明治政府の国策として海外向けの輸出品としてその技芸が求められ、工人達は活路を拓いていったらしいのです。宮内省は優れた美術・工芸作家を「帝室技芸員」として顕彰する制度もありました。しかし、基本的には国内にパトロンを失ってしまった明治の工芸。技術的にはこの時代がピークだったのかも。

江戸から明治の工人たちも、ただでは起きなかったのですね。

そんなわけで、この頃の工芸作品は欧米に売られて日本にはあまり残されていなかったらしいのです。そういえば、美術の教科書にも明治の工芸品なんか出てこなかったような。それを海外オークションまで出向いて、1点1点買い戻したという、清水三年坂美術館の村田館長は凄い人だと思う。
その功績のおかげで、虫六もたっぷりクールジャパンの眼福を堪能させていただいたわけです。京都にいったら、ぜひ本家を覗いてみたいものです。


三井記念美術館ってはじめて来ましたが、確か高層ビルの中に入ったはずなのに、三井記念美術館に向かうと、建物は重厚な洋風建築の風合い、これまた古そうなエレベーターだなーと思っていたら、奥に三井本館がつながっていて国の重要文化財に指定されているそうな。

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