2010年6月28日月曜日

俺の電車、終点まで乗って行けよ_『RAILWAYS』 49才で電車の運転手になった男の物語

うかうかしていると見逃しそうな気配だったので、(私のまわりでは)話題の映画『RAILWAYS』を見てまいりました。

大手電機メーカーのエリート社員・筒井(中井貴一)が、49才にして取締役就任を目前に、親友の死と実家の母の不治の病をきっかけにして、人生を見つめ直し、故郷に帰って幼い頃からの夢だったローカル線(一畑電車)の運転手になる…というストーリー。

又聞きでは実話を元にした…という話でしたが、どうやらそれはガセのようでした
( ̄◆ ̄;)
そして、フツーに考えれば現実味のない夢物語のようですが、どうして w(゚o゚)w なかなかこれがリアルな、ありそうな話に見えてくるのでした。

そういえば、700万円の研修費用を自己負担したら運転手に採用するという公募を行ったら、応募者が殺到(?)したという「いすみ鉄道(千葉県)」のニュースもありましたし…。

都会の容赦ない競争社会のただ中で、たとえ勝者の側にしたとしても、すり減らしていたり、大事なものを捨てていること自体に無自覚に、あるいはそれに目をつぶって前進している人たちというのは、今の日本にはたくさんいるのだと思います。そして、そうやって勝ち取ってきたものを、人はそうそう手放したりできるものではないとも思います。

この映画の主人公も、家族との会話もないままに、親友と酒を飲む間も棚上げにして、会社人としての自分の仕事を最優先にしてきた人物。
そんな「できる奴」が、幼いときの「畑電の運転手になりたかった」という夢を思い出し、人生をリセットする。その闇雲さと逡巡と理性のバランスが、なんだかリアルでした。

もう一つ、自己中な亭主に振り回されてずぅ〜と待ちぼうけをくらったままの妻(高島礼子)が、一念発起で始めた事業(ハーブティのお店)という伏線があり、このままの関係でいいのかどうかずっと悩みつつ、なかなか東京を出ようとはしない…。これもリアル。
年老いた母が亡くなって、本当は何度も病室を妻が見舞っていたことがわかったある日、主人公の電車に妻が乗っていて、やっと夫婦らしい会話をして、そして「せっかく来たんだから、俺の電車、終点まで乗って行けよ」と主人公が声をかけると、それを待っていたように妻が「はい」。妻のホッとしたような表情がなんとも印象的なシーンでした。

そうですよね、人生の答えなどすぐに出さなくてもいいんですよね。

そして、主人公が夢を乗せるもう一つの主役は、現役80年(!)のデハニ50形という畑電の名物電車。
赤くて、小さくて、扉が手動で、車体が木製で、建てつけが狂うと大工さんがカンナをかけるいう、超レトロな代物です。これがまた、いいですね。

地方の赤字ローカル線云々とか背景はいろいろとあるはずなんですが、この赤い電車(黄色い2100系とかのも走っていましたが…)が風景に溶け込んで、ここに乗り降りするする人の暮らしをつないでいて、するどいチョイスだなぁと思いました。

それにしても、制服を着せたら中井貴一さんの右に出るものはいませんね。

いまのところ、私のまわりでは好評なのですが、一般的にもっとヒットして欲しいところです。良い映画なのに。「鉄」関係はなんだかんだで3割くらい損しているのかもですね〜。




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