2017年5月17日水曜日

赤坂歌舞伎2017『夢幻恋双紙 赤目の転生』_こんぴら歌舞伎2017弾丸ツアーレポート⑤

これ、こんぴら歌舞伎ツアーと言っていいのか憚られるのですが、虫六的にひとくくりの時間軸ですので、今回はこのお芝居で〆でございます。

赤坂歌舞伎2007『夢幻恋双紙 赤目の転生』。勘九郎さんが人気演出家の蓬莱竜太さんにラブコールして1本書いてもらったという新作歌舞伎。中村屋、攻めの公演です(たぶん)。

昨日までは江戸時代の芝居小屋で熱に浮かされておりましたが、今日は東京のど真ん中(?)赤坂の幟の前に立っております。タイムワープしたみたいッス。

ははあ、「赤坂ACTシアター」の上にまねき看板があげられておりますよ。みんな仲良く1列です。猿弥さん、鶴松くん、いてうさん…存在感ましましですね。っていうか、同じ大きさなので、鶴松くんが座頭みたいに見えるのは私だけ?


○赤坂大歌舞伎

平成29年4月6日(木)~25日(火)

蓬莱竜太 作・演出
新作歌舞伎
夢幻恋双紙(ゆめまぼろしかこいぞうし) 赤目の転生(あかめのてんせい)

太郎    中村 勘九郎
   中村 七之助
剛太    市川 猿弥
   中村 鶴松
末吉    中村 いてう
源乃助 中村 亀鶴
善次郎 片岡 亀蔵

「どこにでもありそうな原っぱ」に長屋の子供たち。訳ありで引っ越してきた歌(七之助)という少女に恋い焦がれる赤目の太郎(勘九郎)。歌には悪そうな隻眼の兄・源蔵(亀鶴)。二人は夫婦になる。太郎は優しいけれど生活能力がなく、歌との生活は破綻…太郎は、源蔵の悪事の手伝いをさせられながら、ついには命を落とす…と思ったら、あの原っぱの同じ場面に立っている…。また同じセリフがループ状に繰り返され、次に出て来た太郎は、万能選手のパワハラ男…。
歌への思いは同じなれど、なんど生き返っても上手く行かない太郎の人生。最後は…。
…目がね…、最後は禁断パターンかなって、ちょっと分かっちゃいました。

太郎が変わるにあわせ、脇のキャラクターも微妙に変わるものの、役者に似合った脚本で、アテ書きなのかな?冒頭の「原っぱ」で歌に似顔絵を見せ合う場面で、鶴松・静が木の下に逃げて「静は描いてないからね—」とすねていうのが可愛かった。もっとも、さすがに4回繰り返されるとちょっと飽きましたが…。
鶴松君は、大人になってちょっと声が太くなってしまったんですね。

勘九郎さんは、なぜだか舞台で脱ぎたがってないか?身体に自信があるのは分かるんだが…見せたいのか、見せたいんだろうなー ( ̄◆ ̄;)
七之助・歌が、質種に入れた感じで着物を減らしていき、後ろ姿だけでうらぶれていく時間の経過を見せたところは上手だなと感心しました。

全体的には勘九郎さんの得意領域という感じで、意欲もあり面白かったけれど、新作歌舞伎というよりは、ストレートプレイ寄りの時代劇って感じでした。コクーン歌舞伎があっての赤坂歌舞伎なんだろうなと、芝居の最中にコクーンで見たあの芝居やこの芝居がフラッシュバックしてしまいました。

「歌舞伎役者がやればなんでも歌舞伎になる」と勘三郎さんはおっしゃったそうですが、本当にそうなのかな。(いや、勘三郎さんに言われると説得力はあるんですけどね)。現代的なテーマや素材で作っても歌舞伎にはなると思うけれど、歌舞伎という様式のデパートみたいな演劇手法の本質を掴み、その寸法に収められるかどうかで、面白さはだいぶ違ってくると思う。
「研辰の討たれ」や「ワンピース」は、その点で成功していると思うし、この兄弟の最高傑作は、虫六的にはまだ「天日坊」です。あれ、再演して欲しいなぁ。

それからね、これは余計なお世話かも知れないのですが、新作歌舞伎っていう時に、役者だけが生き残れば歌舞伎が生き残れるって言うものでもない気がするんですよね。黒御簾も、竹本や地方も、道具も、鬘も、歌舞伎を支えている全てが新しいことに挑戦できるような作品を生み出してもらいたいなと思うんですよ。ほんと、好きな事言って申し訳ないけれど、でないとやっぱり先細りする気がするんですよね。

というわけで、最後は荒けずりながら伸びしろいっぱいの芝居をみて、満腹で帰って来た黒翅ツアーでした。


2017年5月11日木曜日

仁左衛門の『お祭り』_こんぴら歌舞伎2017弾丸ツアーレポート④

さて、2日目の23日(日)は今年のこんぴら歌舞伎の千穐楽でありました。千穐楽の恒例行事として小屋が開く前に「三味線餅つき」があります。

荷物をまとめて、お世話になった虎丸旅館さんに一時預かりをお願いし、靴を履こうとしたらふと目に入ったこの絵看板。
虫「おんやー、『身替座禅』ですね。今年のために出されたんですか?」
おかみさん「いえいえ、いつもあるの。たまたまウチに回って来たのがこれだったんだけど得しちゃいました。笑。今年の仁左衛門さんの、良かったわねー( ^ω^ )」
虫「はい〜〜〜っ〜〜(*≧m≦*) 」

そんなわけで、良い場所で見ようと早くに出かけたはずでしたが、小屋前にはもうけっこう人垣ができており、最前列には行けなかったのでした。特に、虫六の前には長身の若者が、昨日の御柱のごとく立っていて後ろの人たちみんな見えないの。(人なら話は通じるだろう…)と、おばちゃんパワーで「大変厚かましくて申しわけないけれど、あなた大きいからちょっとしゃがんでくださると、後ろの人が10人くらいみることが出来ますよ…」と声を掛けたら、少し怪訝な顔をしつつもグループ一同(4人くらい)しゃがんでくれたので、見晴らしがぐーんと良くなりました。(周りの皆さんからテレパシーで大向こうを受け取った虫六でした。笑)
若者よ、空気読んで気を利かせようよ。たのむよー。

琴平高校生のお囃子クラブの生徒さんたちの「こんぴらふねふね」の伴奏にあわせて、餅つきするんですが、見に来たお客さんに何臼か先についてもらって場を温め、待ってました!って感じで、今度は役者さんが順番に出て来てお餅つきをします。(別途折り込みページ参照)
地元のみなさんがこの公演を盛り上げようとしてやっていて、役者さんが華を添えてくださっているという感じなんでしょうね。殿(しんがり)は、襲名披露の雀右衛門さんが羽織袴で登場してくださいました。襲名おめでとうございます!
仁左衛門さんが登場しなかったので、お目当てにしていたご婦人方はブーブー言っていましたが、大幹部は出ないのも恒例らしいッスよ。(「お祭り」切りの演目ですし、まだ休んでていただきましょう…)

ついたお餅はお客さんに振る舞われました!虫六子のお土産に持って帰ろう。

さあて、2日目昼の部の席は…、1階い9の枡席。
比較的うしろっ方ですね。

ブドウ棚前方に掛けられた、役者の紋付き提灯。松嶋屋(仁左衛門)の七ツ割丸二引とか、京屋(雀右衛門)の京屋結びとか、明石屋(友右衛門)の丸十とか、松嶋屋(孝太郎)の追いかけ五枚銀杏とか…。あれっ?松嶋屋の紋が2つあるけど、仁左衛門さんと孝太郎さんは別の紋使ってるんだっけ?

あれれ、枡席に座椅子が置いてある。前は無かったがなぁ。狭い空間がいっそう狭くなって後ろの人が足を伸ばせなくなっているぞ。

気の利くお客さんたちは座椅子を横に配置したりして、枡ごとに適当に場所を作っているみたいなので、我らも仮花道と歩み板の角に背をずらしたり座椅子をとっぱらったりして隙間を作りました。足をのばしたり、多少態勢を変えながら見れないと苦しいですからね。虫六は職場で使っている骨盤サポートシートBackjoyを持ち込んでみたら(ちらっと見える緑色のやつです)、座椅子なしでも腰が立って楽でした。


○四国こんぴら歌舞伎大芝居
中村芝雀改め五代目中村雀右衛門襲名披露

  平成29年4月8日(土)~23日(日)

【第一部】

福内鬼外 作
一、神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)

お舟     片岡 孝太郎
傾城うてな  坂東 新悟
新田義峯   大谷 廣太郎
六蔵     片岡 松之助
頓兵衛    坂東 彌十郎


二、忍夜恋曲者(しのびよるこいはくせもの) 将門

傾城如月実は滝夜叉姫 芝雀改め中村 雀右衛門
大宅太郎光圀     尾上 松緑


三、お祭り(おまつり)

鳶頭松吉    片岡 仁左衛門


「神霊矢口渡」ははじめてみる演目。全体はどうやら『妹背山婦女庭訓』のお三輪や『新版歌祭文~野崎村』のお光の役どころにみられる、田舎娘が三角関係と知らずに身分違いな恋をして、結局自分が身を引いて命を落とすというプロットなんですが、なんだか珍奇な話でした。急に気を失ってみたり、白旗で戻ったり、瀕死なのになかなか死なずに太鼓打ったり…と思ったら、これ平賀源内がペンネームで書いたお芝居なのね。なるほど〜。
田舎娘お舟・孝太郎と傾城うてな・新吾の対比が良かったです。

襲名披露の演目は『将門』。
筋書きに常磐津和英太夫さんのお名前があったので、どこどこってなったんですが、残念ながらこの日は出演されていませんでした。
よく考えれば当たり前ですが『将門』って相馬藩の話だったのですね。予習が足りませんでした。作り物の蝦蟇は迫力なくて妖術あるのか〜本当に?でしたが、古風な滝夜叉姫は当代雀右衛門さんにとてもあったお役だと思いました。

そして、仁左衛門さんの『お祭り』。
いやー、この演目はこれまで勘三郎さん、三津五郎さん、仁左衛門さんご本人のも拝見しましたが、そのどれとも違う新鮮な舞台でした。

なんて表現したらいいのかな、まるでマジックや手妻をみているような…。
もちろん粋でいなせな鳶頭、仁左衛門さんは立っているだけで絵になるわけなんですが、そのカッコ良さがとても自然で全く力んでない感じなのです。しかし、仁左衛門さんが踊り出すと、もうちょっとした所作や呼吸によって舞台全体がコントロールされていて、また客席もその息にいつの間にか飲まれていきました。

色っぽいモテ話を披露するクドキの場面では、衣装の変化や使う小物まで美しくて陶然と心を鷲掴みされ、また、やんちゃな連中に喧嘩をふっかけられる場面の「所作立て」といわれる立ちまわりでは、まるでブロードウェイミュージカルのよう(みたこと無いけど)に、全員の動きが一体で見事でした。すべてが仁左衛門さんの身体の延長にあるように感じられました。そして、若い者仁助と争いながら面を被って踊る場面では、おかめ面の仁左衛門さん、白い袖を面の下にやって身体を隠しながら女役になって踊るんですが、このときに袖からちょっとだけ出た指が…たおやかな女性のそれで、うわっ、蓑助さんが使う文楽人形みたいだと一瞬脳内にパチパチしたと思ったら、ぐいっとその世界に持っていかれて夢中でみているうちに、気がつけば仁左衛門さんは鳥屋に消えてゆき、はっと夢から覚めたような感じでした。何だったんだー!?いまのは…。

73才にしてこの色気、そして、この踊り。本当に日本の芸能ってどこまでものびシロがあるんですね。「まことの花」をみた思いでした。

*後日、帰宅してから復習したいなと思い、ビデオデッキを漁っていたら、「古典芸能への招待」で2014年6月の歌舞伎座での仁左衛門さんの『お祭り』を発見!
「先代の勘三郎のおじさんなんかがこの役をやると、いかにも鳶頭って貫禄があっていいんですけど、私がやるとどうしても若頭くらいにしかならなくて…」とインタビューに答える松嶋屋。(いやいやいや、若頭でけっこうです!!!!)それにしてもカメラが撮った映像を編集されてしまうと、実際の舞台を集中してみた時に体験するような「場に飲まれる」感覚って伝わらないのね。うわー、ここでカットしてしまうんですか〜って、もったいない感じでした。)

 とにもかくにも、金丸座で期待以上の仁左衛門丈の舞台を見ることが出来て、遠路琴平を訪れた甲斐がありました。
(できれば今回参加できなかったN姐さんにこの舞台を見せたかったなぁ。)

そんなわけで、舞台がはねたら、急いで帰り足。
千穐楽の夜の部もみるのーっていうKコトラさんを小屋に残し(ずるー!)、我々は狸屋さんでまずは腹ごしらえ…。2日連続で「天おろしぶっかけうどん」。これが好きだから、毎日でもいいの。

帰りは特急「南風」で岡山まで戻り、そこで倉敷コースのI田さんと別れて虫六は新幹線で東京へ。…しかし、怒濤のツアーはこれで終わらないのであった。

2017年5月7日日曜日

白眉なり仁左衛門の『身替座禅』_こんぴら歌舞伎2017弾丸ツアーレポート③

2017年のこんぴら歌舞伎は、仁左衛門丈が座頭の組で「芝雀改め五代目中村雀右衛門襲名公演」であります。

さすが女形の雀右衛門さん、ワコール提供の華やかな襲名幕です。
今日の席は西桟敷2番。いちばんのお大尽席がある2階西桟敷のちょうど真下にあたりますが、この席の脇には小屋の中でいちばんぶっとい柱が鎮座しており、まんまですと舞台の半分が視界に入ってきません。厳しいなぁ …とごちながら、舞台の動きに合わせて、遠慮気味に態勢を変化…私の後ろにギザギザのEXILEモーションが出来ていたかもしれません… (;;;´Д`)ゝ。

金刀比羅宮は今は神社ですが、明治時代に廃仏毀釈が起こるまでは象頭山金光院松尾寺という真言宗の寺院で、いま虫六の頭上にあるお大尽席はそのお寺の別当さまが座るお席だったとの、Kコトラさんの解説…(注:メモして聞いていないので多少違うかも)。
…へえ、別当さまもこの柱は邪魔だったよなぁ、きっと。

でも、芝居小屋の雰囲気は伝わってきて面白いお席です。

○四国こんぴら歌舞伎大芝居
中村芝雀改め五代目中村雀右衛門襲名披露

  平成29年4月8日(土)~23日(日)

【第二部】
一、芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ) 葛の葉

 女房葛の葉/葛の葉姫 芝雀改め中村 雀右衛門
 柵       坂東 竹三郎
 信田庄司    片岡 松之助
 安倍保名    大谷 友右衛門


二、五代目中村雀右衛門襲名披露 口上(こうじょう)

 芝雀改め中村 雀右衛門
 幹部俳優出演


岡村柿紅 作
三、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)

 山蔭右京    片岡 仁左衛門
 太郎冠者    尾上 松緑
 侍女千枝    坂東 新悟
 侍女小枝    大谷 廣松
 奥方玉の井   坂東 彌十郎

以上が【第二部】つまり夜の部の番組。

「葛の葉」は女形の大役で、もちろん雀右衛門丈が葛の葉をつとめます。陰陽師・安倍晴明の生母が、実は信田の森に千年も住んでいる白狐だったという「葛の葉伝説」をモチーフにしたお芝居で、正体がばれそうになった女房葛の葉が、赤ん坊をあやしながら、障子に和歌「恋しくば 尋ねて来てみよ和泉なる 信田の森の恨み葛の葉」を揮毫して、狐の正体を現して古巣の森に帰っていくクライマックスが見せ場です。筆を口に加えながら文字を書いたりしてちょっとアクロバチックなんですよね。

とはいえ、前段は柱のほうが気になってなかなか集中できず、けれん味がなくてイマイチ感否めず、最後は面白かったなぁと暖まっていたんです、が…虫六周辺の眼の肥えた方々、扇雀さんは金丸座の掛け筋をつかって宙乗りで消えていった、とか、時蔵さんの文字はきれいだったとか、手厳しいのでありました。葛の葉って、字が上手くないとダメなのね…やれやれ女形も大変なんですね。

口上では、仁左衛門丈が音頭をとって新・雀右衛門の襲名披露、一同列座のご挨拶。

仁左衛門丈が、先代の雀右衛門のおじさまはサングラスに革ジャンでオートバイに跨がって、それはそれはダンディでいらっしゃった…と(当代にそれを求めるのはちょっときびし…と言いかけて、会場笑い、雀右衛門さん苦笑…イジられとる)。そして、「自分の若い時に、先代には相手役に抜擢していただいて、大きな役をいろいろやらせていただいた大恩人です!」と感謝を述べていました。

それを聞いてフラッシュバックしたのは、虫六の歌舞伎観劇初体験。それまでテレビの「芸術劇場」(番組名あいまい)をみてヲタク心を満たしていたものの、本物の舞台を見るチャンスはなく、大学生になって上京の機会が作れるようになり、馳せ参じたはじめての歌舞伎舞台が新橋演舞場の『恋飛脚大和往来』の「封印切」と「二口村」だったのですが、これに出演していたのが、片岡孝夫の忠兵衛と先代雀右衛門の梅川でした。
今思い出してもうっとりするほど綺麗だったなぁ。(…と思いだし、ちょっとググってみたら、なんとその時の舞台とおぼしき映像が!( *≧艸≦*)

六代目成駒屋の権勢の陰で、先代が苦労したお話も何かで読みましたが、上方出身の孝夫時代の仁左衛門も、人気はあるのに本丸の歌舞伎座ではなかなか役が付かなかったという話も有名なので、あの会場が新橋演舞場だったことも理由があったのかなと、今になってみるといろいろ想像が膨らんだりした仁左衛門丈の口上でした。


で、『身替座禅』。
玉の井が岡惚れして一時も離れたくないという気持ちが共感できてしまうほど、美しい山陰右京。これって、ただ美しいってだけではだめで、チャーミングさが大切なんですよね。そういう意味では、勘三郎さんの右京とはまた別の魅力がありました。
恐妻家なのに浮気だけには知恵がまわるダメンズなんだけど、それが憎めない感じ。かつ、育ちはよくて気品があり、あくまで大人っぽい色気。
そういうものが、端正な所作やちょっとした視線の先に雑味なく表現されていて、鳥屋の向こうに好い匂いの花子がいるような、良い気分で過ごしてきた時間の余韻も感じさせて、凄いわぁとうっとりしているうちに、玉の井とのドタバタをこれまた下品にならないように笑わせて、あっという間に幕となりました。彌十郎さんの玉の井も恐妻ながらも芯は乙女なところが可愛くて哀れ。あえて怖い化粧にしないところが良かった。
(あーん、終わってしまった、もったいない…って感じ)
この芝居小屋だからこそ、それが濃縮して感じられたのかも…と思うと、この芝居小屋でこの舞台を見れたことは誠に眼福でありました。
たぶん今生みるべき『身替座禅』をみることが出来たという思い。

満足して小屋を出ようと下足を履いていたところで、頭上に神棚を発見!献げた御神酒に役者のみなさんのお名前がありました。今回、金比羅宮にお参りする時間が取れないので、ここで手をあわせました。(金比羅の神様すみません)

小屋を出てみんなが集まるのをまっていたら、ゴミ清掃車が本日のゴミを回収していきました。すごい量ですね。ご苦労さまです。
いよいよ明日は千穐楽、最後までよろしくお願いします。


2017年5月4日木曜日

サンライズ瀬戸で琴平まで夜行旅_こんぴら歌舞伎2017弾丸ツアーレポート②

平時は高松止まりの「サンライズ瀬戸」ですがこの時期(3〜6月の金曜日と休日の前日の35日間)は、琴平まで行き先が延長されます。

22時発のサンライズ、30分前には入線していました。

今回は2人旅なのでツインでも良かったんですが、サンライズを狙うなら数の少ないツインよりも各自シングルの方が取りやすいぞ(!)という、“テツ道ご指南役”のアドバイスをいただき、IK田姐さんとそれぞれシングルを予約したら、なんと1号車と7号車に別れてしまいまして、しょうがないので3号車のカウンターがあるミニラウンジで軽くビールでも飲んで眠くなったらそれぞれの部屋に帰ろう作戦を決行。早々とミニラウンジに陣取った我ら。…東海道線の車窓を眺めながら、夜は更けていくのでありました。

まぁ、こちらはうまくいったんですが…。あ、シャワー券をゲットしとかなくっちゃ!と思った時は刻遅く、すでに品切れでした。
ちなみにシャワーはデラックスツインには個別に付いていますが、それ以外の個室や座席を利用の人は共有のをシャワー券を買って利用するのです。シャワー券はひとり6分間のお湯が利用でき、途中ストップすることも可能だそうです(使えませんでしたが)。積んでいるお湯の量に限りがあるから、早い者勝ちでもけっこう発行枚数が少ないのね。涙。

でも、こんなチープ感も通常料金の夜行列車なればこそ。高級リゾート列車だとこんなトホホは楽しめません、きっと。

ちょっとお酒も入り、あとは寝るだけーで、自分の個室に戻ってきました。カプセルホテルみたいで、けっこう居心地良くて、わくわく。上段なので窓をあけると宵闇に風景が垣間見えますが、駅を通過するたび眩しいのでシャッターを下ろして布団に潜りました。毛布1枚なので、ちょっと寒かったかな。それから、ずっとゴトゴトいっているし、揺れるので熟睡はできませんですね。

浅い眠りの途中で、大きな駅の気配がして目が覚めて、ここはどこかなとスマホで地図をみたら、ちょうど神戸を通過したところでした。その先に路線が沿岸を通るみたいだったので、窓を開けたらこんな景色が広がっていました。

まだ、朝までは少し時間があるのでもう一寝入り。

放送がなって、もうすぐ岡山に到着です。
おー、朝だ、朝だ。西日本の朝だ。

列車は岡山駅で連結をはずして「サンライズ瀬戸」と「サンライズ出雲」に別れてそれぞれ行き先を別にします。虫六は「出雲」号との境の7号車だったので連結をはずす作業を見学しようかとも思っていたんですが、窓の外にわらわらとカメラを抱えた大勢の人が集まっていくのをみて、少々気後れ…ま、いいか。引っ込み思案の撮影細胞はモチベーションを下げたのでした。

早朝の瀬戸内海、きれいだなぁー。

サンライズ瀬戸が高松に着きました。
実は、IK田姐さんとの昨夜の作戦会議で、高松で下車して栗林公園に寄り道して琴平に入ろうという計画を立てたので、荷物をまとめて列車を降り、改札をくぐろうとしたら、「この切符では下車できません!」とお断りされてしまい、焦って列車に逆戻り。待ち合わせ時間が20分ほどあったので、まずは良かったけれど…。どういうことか?やれやれ。

高松駅に停車中の8000系「特急いしづち」。JR四国と台湾鐵路管理局の友好鉄道協定1周年記念塗装。撮影細胞、復活。

なんだかんだで琴平とうちゃ〜く!
サンライズ瀬戸が到着すると、ほどなく2両編成のディーゼル普通列車が入線してきました。この列車、サンライズが運用されていない期間は電車らしいのですが、サンライズが走ると電力量が足りなくなるのでこの時期はディーゼルが使われるらしいです。

けっこう人がおりました。

宿に荷物を置いてとんぼ返りで、琴電に飛び乗り高松方面に。

せっかくなので、栗林公園を散歩。2時間無駄にした勘定ですが、まあ琴電にも乗れたので虫六的にはOK。それにしても、このお庭でかいです。借景にしているこの山(紫雲山)の安定感がまた雄大さを倍増。

広い上に、ハンパない巨木ばかり…。さすが日本屈指の大名庭園です。

飛来峰という高台からの眺めが絶景でした。

舟に乗ったら楽しかったかも…ですが、あまり時間がないので、みるだけってことで。

IK田姐さんには先に琴電琴平駅まで帰ってもらい、虫六だけお土産を買いに「榎井駅」で途中下車。毎度の丸尾本店に「悦び凱陣」を仕入れに行きました。いつもは品切れで、蔵出ししだい送っていただくのですが、今回は在庫があってラッキーでした。

というわけで、約束の時間となりました。いつもの「狸屋」さんにKコトラツアーの面々が集合。いつもの天おろしうどんで腹ごしらえ。
あ、なに狸屋さん!この麗しいサインは!

やややや、や、や、や、、、、
…うむを言わさず盛り上がっちゃいますね。

また来たよ〜、金丸座!
今年は、片岡仁左衛門丈が座頭の雀右衛門襲名記念公演なのですー!
木戸口くぐって、いよいよ金比羅歌舞伎2007夜の部を観劇します。

2017年5月2日火曜日

途中下車で歌舞伎座4月公演にて染高麗&猿之助の『伊勢音頭恋寝刃』_こんぴら歌舞伎2017弾丸ツアーレポート①

ゴールデンウィークに突入前の4月21日(金)〜24日(月)、休日出勤の振休を投入して連休をいただけたので、黒光りした翅に身を包み、行ってきました琴平へ。少々長いので、数回に分けてご報告いたします、です。

久しぶりの金比羅詣。
前回は虫六子の浪人中だったので2014年のことでした。あれも「予備校を休みたくない!」と言われて弾丸ツアーでしたな(遠い目)。 虫六子は今回も来たがっていたけれども、学校休めない(MAUは土曜日も授業)ので残念でした。…っていうか、おまいの分まで浪費できないので、行きたいなら自分で旅費を賄って欲しいんですけど… ( ̄◆ ̄;)

まぁ、せっかく琴平まで行くのでお江戸で途中下車。琴平行きの列車までだいぶ時間がありますので、まずはこちらのパワースポットに…。

4月の歌舞伎座・昼の部は、染高麗と猿之助の『伊勢音頭恋寝刃』が掛かっております。
見ない理由が見つけられないなーと空き席をチェックしましたら、好ましい席が1つ空いておりまして、理性細胞は「幕見」にしろっ!て言ってたんですが、指先が暴走してポチってました(爆)

歌舞伎座4月大歌舞伎
【昼の部】

一、醍醐の花見(だいごのはなみ)
中内蝶二 作 今井豊茂 脚本

豊臣秀吉   鴈治郎
豊臣秀次   松也
大野治長   歌昇
曽呂利新左衛門   萬太郎
淀殿     壱太郎
三條殿    尾上右近
大野治房   種之助
前田利家室まつ   笑三郎
松の丸殿   笑也
石田三成   右團次
義演     門之助
北の政所   扇雀


二、伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば) 追駈け/地蔵前/二見ヶ浦/油屋/奥庭


福岡貢    染五郎
仲居万野   猿之助
料理人喜助  松也
油屋お紺   梅枝
油屋お岸   米吉
奴林平    隼人
藍玉屋治郎助 錦一
桑原丈四郎  橘太郎
杉山大蔵   橘三郎
徳島岩次実は藍玉屋北六   桂三
藍玉屋北六実は徳島岩次   由次郎
油屋お鹿   萬次郎
今田万次郎  秀太郎


三、一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき) 熊谷陣屋

熊谷次郎直実 幸四郎
源義経    染五郎
熊谷妻相模  猿之助
亀井六郎   宗之助
片岡八郎   竹松
伊勢三郎   男寅
駿河次郎   弘太郎
梶原平次景高 錦吾
堤軍次    松江
藤の方    高麗蔵
白毫弥陀六実は弥平兵衛宗清   左團次


実は「4月に『伊勢音頭…』かよー」と思っていましたが、『醍醐の花見』はさすがに桜満開の舞台で華やかでした。桜の舞台装置も見事でしたが、膜が上がると5人の女形がずらーっと並んで妍を競っておりました。
『醍醐の花見』は、「北野の大茶会」と並んで有名な太閤秀吉主宰のイベントで、慶長3年に京都・醍醐寺で催されたお花見のことだそうです。
北の政所を中心に、淀君(壱太郎)、松の丸殿(笑也)、三條殿(右近)、前田利家の正妻まつ(笑三郎)が勢揃いして、ライバル意識剥き出しで一悶着…。笑也さんがイケズな感じを滲みだして良い仕事してました。悔しがる壱太郎さんの表情が、羽生弓弦君に似ていました(笑)

春爛漫ののどやかな風情に、酔い心地。鴈治郎秀吉が花道から登場して、舞台に届いたところで客席を眩しげに眺めると、私たち桜に見立てられた気分です。鴈治郎さんの大らかさが天下人ぽい。このほろ酔い気分が、いつの間にかどろどろ禍々しい夢の中に引きずり込まれる感じになって、気がつくと松也秀次に因縁つけられて、襲われる展開。
…あー、秀次って秀吉に関白にさせられたのに結局切腹させられた甥でしたね(『真田丸』反芻)。右團次三成が出て来て立ちまわりをしたら、舞台がピリッと引き締まりました。まとまった良い作品でした。基本的に舞踊劇みたいで、地方さんがず〜〜〜〜っと演奏しっぱなしなのに驚愕しました。さすが「長唄」。

曽呂利新左衛門で萬屋さんの萬太郎君が良い役をもらって印象に残りました。口跡良いし、踊りもきちんとしていて好感です。萬太郎君はたしか三味線が得意だって聞いたので、邦楽番組のMCでもやって欲しいところです。NHKさん、どおですか?

さてお目当ての『伊勢音頭恋寝刃』。福岡貢は染五郎さん。仁左衛門さんがお稽古に入ったという噂が聞こえてきました((w´ω`w))。やっぱり白地の絣、似合いますね。
でも難しい感じもありました。秀太郎の萬次郎とのやり取りで、貢の方がすっころばしに見えてしまうとか、決めて欲しいポーズがやや決まってなかったり。でも仁左衛門以外では、今この役いちばん似合う役者さんだと思うので、ぜひ何回もやってご自分のものにしてください。
万野は猿之助さんですが、性格悪ーい役をなんだか楽しそうに(たぶん)やっていました。ねちねちと。こういう役、面白いんでしょうね。

貢が白絣(これが、殺人事件で鮮血に染まるわけですが…)なら、万野は黒の絽でしたね。やっぱり夏の出し物ですよね…うだるような真夏の狂気劇なんだよね。

いちばん口跡がよく、セリフが聞き取りやすかったのはなんといってもお鹿の萬次郎さん。素晴らしい安定感。哀れだけど、かわいいお鹿さんでした。梅枝さんのお紺は幽霊みたいで怖かったぞ。松也さんの喜助ははまり役ですね。

『熊谷陣屋』は、幸四郎さんの熊谷直実。首実検の場面、女房相模の動揺を読んで(とにかく落ち着け…)って表情で手で制する場面に「情」が感じられて良かったです。でも、猿之助さんの相模はなんだか教科書通りって感じで感情移入ができませんでした。
芝翫襲名公演(2016年10月_すみません、見に行っときながらブログ書いてませんでした…_ノフ○)の芝翫熊谷、魁春相模の舞台を見た時はぼろぼろ泣けたのに…。不思議だな。

様々なジャンルとのコラボレーションや、失敗を恐れず新作にも意欲をみせ、活躍目覚ましい染高麗と猿之助。歌舞伎の可能性を広げつつ、また自身のプロデュース経験を積むということでは大事なことだと思いますが、個人的にはこういう歌舞伎らしい演目で役者として成熟していく姿をみたいです。

夜の部に掛かっている猿之助の『奴道成寺』も気になりましたが、時間がないので、そのまま六本木まで足を延ばし、サントリー美術館の『絵巻マニア列伝』を大急ぎでみて…
この日最終的に向かったのは東京駅。
S市から金比羅ツアー同行のIK田さんと待ち合わせてして、軽く腹ごしらえしたあと乗り込んだのは…

この列車!東京駅22:00発のサンライズ瀬戸。日本に残る最後の普通料金の寝台特急です!(岡山で、サンライズ出雲とサンライズ瀬戸に別れます)
1ヶ月前、金比羅歌舞伎チケットも入手できるかどうかも分からないのに、行くぞって事だけを決めて、「10時打ち」で指定席をゲットしたのです。
そんなわけで人生初の寝台特急で再び琴平に向かいます。

2017年4月19日水曜日

3月に読んだ本

3月の読書メーター読んだ本の数:4読んだページ数:910ナイス数:34


パルプ (ちくま文庫)パルプ (ちくま文庫)感想
帯に惹かれてうっかり手にとっちまったばっかりに、ツキのねえくそったれ中年探偵のひでえ話につきあうことになっちまった。目も眩むぴちぴちドレスのイカしたご婦人の依頼人やら、人を遠隔操作する美人系宇宙人…スッチャカメッチャカな登場人物で調査は入り乱れて尻尾もケツも押さえられず失敗つづき。でも、めげない主人公のタフさがすげえ。(悪態言葉もいざ使ってみようと思うと難しいものですね…)読了日:03月17日 著者:チャールズ ブコウスキー

夢十夜夢十夜感想
岩波書店の漫画、ハードカバーです。作者はまず原作を読んでから漫画と比べて欲しいそうです。先に漫画読んでしまいましたが。なんとなーく漱石先生に似た登場人物が小説というより本当に作家の夢日記だったのかと思わせます。一つ一つはつながってもいないオムニバスで、1話の中にも脈絡があるような無いような…はまさに夢なのですが、近藤先生の手に掛かると、これが中世の説話のようにも感じられ(実際は明治)、また夢で闇に落とし込まれる時のような湿気や重みのリアルさがあり妙味を感じました。寝る前に読んでいたら変な夢をみました読了日:03月16日 著者:近藤ようこ

大奥 14 (ヤングアニマルコミックス)大奥 14 (ヤングアニマルコミックス)感想
篤姫(胤篤)の人徳が出会う全ての人を磁石のように惹きつける。人の上に立つ人って、つまりこういう人でないとうまくいかないんだな…と現代社会にも被ります。それにしても、阿部正弘の無念が悔しいなぁ。正史に重ねて描いているところが、またニクいわけで。読了日:03月12日 著者:よしながふみ

戸川純全歌詞解説集――疾風怒濤ときどき晴れ (ele-king books)戸川純全歌詞解説集――疾風怒濤ときどき晴れ (ele-king books)感想
歌姫復活。CD「わたしが鳴こうホトトギス」のカッコ良さに衝撃を受けて、思わず昔の音源を引っ張り出したら、LPで、戸川純が自分のアイドルだった青春時代が超高速で蘇ってきた。そしてこの全歌詞解説集。ミュージシャンとしてのテクニックや表現の深さは当時も感じていたけれど、詩作の後日談はひりひりしたその人生譚が重なる。詩は心を裸にするもの、しかし歌詞は曲との関係で完成するものだという。ソロアルバムやヤプーズ時代の作品だけど古めいていない。諦念ではなく「オープン・ダ・ドー」へ。長生きしてずっと歌っていてほしい。読了日:03月10日 著者:戸川純
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